研究初年度である本年度は、まず、膨大な研究対象候補の中から特定の対象を絞るために、平成21年10月19-20日にフランス極東学院(Ecole francaise d' Extreme-Orient)のピーター・スキリング博士および、東南アジア文献遺産日本保存会の清水洋平博士、舟橋智哉博士等を招き、貝葉写本研究に関するワークショップを開催した。ワット・ラジャシッダラム寺院での貝葉写本調査の実際を聞いた上で、今後の研究方針に関して関係研究者と打ち合わせを行った。 平成22年2月22日から3月5日にかけて、バシコクに渡り、東南アジア文献遺産日本保存会の協力のもと、ワット・マハタート寺院、ワット・アルンの寺院を含めたいくつかの寺院にて貝葉写本調査に従事した。また、チュラロンコン大学、マハーチュラロンコン大学、マヒドン大学など現地の有力な仏教学関連の大学を訪問し、今後の研究協力などに関して打ち合わせし、多くの知見を得た。ワット・ラジャシッダラム寺院においては、いくつかの個別の貴重な貝葉写本の撮影も行い、また仏伝を描いた壁画や経巻厨子なども調査した。現地の調査により、蔵外仏典の研究には、文献だけでなく現地文物、文化の理解が不可欠であるとの結論に達し、今後も仏伝絵画に焦点を合わせ調査を進めていくこととした。 平成22年3月17日から3月18日にかけて、明治期に将来されたスリランカ、タイの写本や仏像などを所蔵していることで知られる横浜三会寺を調査し、大きな成果を得た。
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