研究課題
昨年度は、『集量論複注』第3章の後半部分、ディグナーガによる他学派の論理学説批判のうち(1)世親の『論規』、(2)ニヤーヤ派、(3)ヴァイシェーシカ派に対する批判部分の校訂、翻訳(英和両訳)と『集量論』梵語テキストの再構成を完了した。さらに(4)サーンキヤ派批判部分に対する同様の作業を開始した。特筆すべき点は、ヴァイシェーシカ派批判の部分に、『ヴァイシェーシカ・スートラ』のこれまで知られていない断片が少なくとも2点確認されたことである。同派の論理学史を再構築するのに重要な資料となるであろう。この点は本年度の印度学仏教学会で発表する予定である。同章の前半、ディグナーガ自身の論理学説を展開する部分に関しては、当該部分のすべての偈頌の梵語テキストの再構成とその問題点の分析を学術論文としてまとめ、北京の中国蔵学研究中心から公刊された2008年開催国際チベット学会のプロシーディングスに公表した。当該部分の約73%の梵語原文を回収することができた。偈頒の分析を通して、ディグナーガのテキストの複雑な伝承過程が推測され、少なくとも3種の梵語写本が存在したことが明らかになった。一方、昨年9月京都大学で開催された世界サンスクリット学会では、研究分担者の志賀氏と研究協力者の渡辺氏が本プロジェクトの成果の一部を発表している。昨年10月には中国蔵学研究中心を訪問し、今後の協力関係の推進について全体的な合意を得ることが出来た。
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E.Steinkellner, et al(eds.), Sanskrit Manuscripts in China.Proceedings of a Panel at the 2008 Beijing Seminar on Tibetan Studies.Beijing
ページ: 153-166
インド学チベット学研究 第13巻
ページ: 98-140