研究概要 |
これまでの研究によって,日本唯識の転換点は蔵俊と貞慶であったという確信をもって科研の申請をしたのであるが,平成21年度は以下のような3つの研究を進め,大きな成果を得ることができた。 (1)約20回におよぶ研究会合を開き,各自の研究発表と研究資料の輪読を行った。 (2)別記7点の研究成果を発表した。 (3)龍谷大学図書館・金沢文庫・東大寺図書館・大谷大学図書館の蔵書の調査研究を行い,新資料の発見や収集を行い,複写して全研究員に配布した。 1年間の研究をとおして日本唯識史上における蔵俊と貞慶の位置づけがより明確になったのみならず,日本仏教史上における位置づけも新たに示すことができことに大きな意義を感じている。。 別記7点の論文は,日本の唯識思想が固定化された伝統教学の相承に終始したのではなく,生きた唯識の研究が長年続けられ,それが蔵俊・貞慶において花開いたとする従来から研究成果をさらに充実したものであるが,同時にまた,蔵俊と法然,法然と貞慶との間に深い関わりが存し,それが法然教学に,そして貞慶教学に影響を及ぼしたことを論証する画期的な研究成果であったと考えている。この成果を踏まえて,平成22年度には「貞慶」を共通テーマとする研究員全員の論文を一括発表する予定である。
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