本研究の目的は、南インド・カトリック教会の一教区を事例として、宗教が「グローカリゼーション」する過程で生じ得る地域文化とその宗教の普遍的な特性の間で生じる摩擦と葛藤について、「インカルチュレーション」という概念を援用しながら再考・再定義し、宗教の世界化という現象に付随する諸問題について集中的に調査・研究を行うことである。本研究は、ヒンドゥー教が圧倒的に優勢な環境にあるインドにおいて、宗教の「グローカリゼーション」が具現している事例としてカトリック教会を取り上げ、キリスト教が現地社会にどのように適応しているのか、そのことによって必然的に伴うキリスト教の変容の諸相について、カトリック教会の宗教儀礼を中心に検証するものである。 申請者は、研究課題を追究するためにタイとインドに渡航し、現地のキリスト教の状況を参与観察し、かつ現地のカトリック教会に関する文献収集した。海外調査により、現地でしか入手できない情報を収集することができた。これらの資料は、本研究に、様々な地域で展開されているカトリック教会の宣教に関する政策の歴史や教義的解釈の変遷の問題を明らかにし、普遍的な宗教の地域的な展開についての研究に新しい知見を見出した。さらに、現地のカトリック教会に関連する参与観察は、各教区で実践される宗教儀礼の記録だけにとどまらず、信徒を含む宗教を受けいれる側が、現地社会に適応したかたちで行われる宗教儀礼をどのように受け入るのかという問題を提起することができた。
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