1. 具体的研究内容 前年度に渡仏しルルドを訪れた際収集した、<信仰と光>巡礼・<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>・<L'Arche>・カトリック倫理・社会的カトリシズム運動・障害児支援活動関連資料の分析を進めるとともに、フランス国外にできた初の<L'Arche>共同体であるトロントの<L'Arche Daybreak>を訪れ、責任者、ボランティア・スタッフ(カナダ、日本、ドイツ、ポーランドの出身者)、入居者(1971年に行われた第一回<信仰と光>巡礼の参加者)へのインタビュー調査を行った。<L'Arche>と<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>の霊的指導者である司祭・修道士(アンリ・ビソニエ、フィリップ・トマ、ヘンリ・ナウエン)の活動と思想についても研究を進めた。日本の関東地方に4つある<信仰と光>コミュニティーの月例会へも参加し、調査を進めた。 2. 当該年度の研究の意義と次年度への課題 トロントの共同体の調査により、ボランティア・スタッフの国際性も含めた運動の広がりと、現場のニーズに応えることで生まれる独自性という二面、および、若者の公的資格取得の場になっている点の重要性に気づき、その視角からのアプローチの必要性を認識した。またパリ本部の決定で、2011年の<信仰と光>巡礼が過去4回とは大きく方針を転換し、国際巡礼ではなく、大陸・地域単位で行われることになるという思いがけない事態となったが、日本・韓国・香港・台湾がアジアの<信仰と光>として2011年10月に奈良へ巡礼することになり、その調査研究という新たな可能性が生まれたことは、本研究にとってプラスであった。また、本報告書を作成中の2011年5月1日に前教皇ヨハネ・パウロ二世が列福され、彼の「弱さ」の霊性への関心が高まっていることから、本研究も、知的障害児巡礼とヴァチカンの政策との関係の研究という最終目標に変更はないものの、次年度は、障害児の存在がカトリック教会共同体において持ち得る霊的な重要性を最初に述べたパウロ六世ではなく、ヨハネ・パウロ二世と、ジャン・ヴァニエ(前教皇と非常に親しかった)や上記司祭・修道士との、思想・人間的な関係の研究に集中することとした。
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