紀元後1世紀のユダヤ人著作家フラウィウス・ヨセフス(37/38-100年頃)はその浩瀚な著作、『ユダヤ戦記』全7巻、『ユダヤ古代誌』全20巻、『アピオーンへの反論』全2巻、それに『自伝』をギリシア語で書き残した。英語圏でのヨセフスの著作の英訳は1602年に始まった。本研究では17世紀から19世紀中頃までに刊行された諸訳を収集し、近代語訳に付されている序文や前置き、訳注、論文などに認められる反ユダヤ主義的な言説等を抽出、さらには印刷上の活字媒体やレイアウトなどに認められる反ユダヤ主義的な傾向等を分析し、英語圏におけるキリスト教的反ユダヤ主義の形成にヨセフスの著作の近代語訳がはたした役割を明確にした。
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