(1) 原田家所蔵の御札コレクションの整理を行った。約4000点あるコレクションの3000点ほどのカード取りを終えることができた。カードを取った分の一部は、エクセルによってデータ入力を行った。今回のカード取りによって、予想以上に遠隔地の寺社を含む多様な御札があることがわかった。近世には多くの御師的な宗教者が東三河地域を廻っていたこと、寺社参詣が頻繁に行われていたことを確認できた。 (2) 大学院生とともに京都大学法学部所蔵『尾張寺社方覚書』を解読し、読み下し文を作成した。この史料は尾張藩寺社奉行が持っていた寺社行政に関するマニュアルで、貴重なものである。これを検討することによって尾張藩が藩内に各宗派の触頭を設けて寺社行政を進めており、近世後期には他国からの宗教者の侵入を警戒したことがわかった。 (3) 近世宗教史を専門とする研究者の会合を実施することができた。如来教教祖の研究と、御嶽講における行者の役割についての発表があった。近世の勧進概念をめぐって討論を行った。「民間宗教者」「芸能的宗教者」よりも「勧進の宗教者」がより適切な用語であるころが確認できた。 (4) 英彦山関係の史料を収集する機会があった。また恐山の霊場を実地調査して、聞き取り調査を行った。地元の研究者と交流し情報交換することもできた。後者において曹洞宗寺院とのかかわりを知ることができた。 (5) 2010年国際宗教史会議で「日本の宗教学」「マックス・ミュラーの影」の発表を行い、本研究の成果の一部を公表した。
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