研究課題/領域番号 |
21520078
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
三崎 和志 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (40506961)
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キーワード | 倫理 / フランクフルト学派 / アドルノ / ベンヤミン / ホルクハイマー |
研究概要 |
今年度もフランクフルト学派の倫理思想に関する研究を着実に進行した。一件の学会報告と編著一冊の原稿執筆というかたちで具体的成果を出すことができた。 唯物論研究協会の第34回研究大会分科会「痛みと正義の倫理的境界-カント、アドルノ、ハーバーマス-」における報告「《言語論的転回》以後のフランクフルト学派の倫理思想を再考する」では、ハーバーマスの討議倫理について、ハーバーマス自身がおこなっている限界づけからその性格、有効範囲をあきらかにし、それをふまえたうえで、アドルノの倫理思想が討議倫理と対立、矛盾したり、討議倫理に依ってたいたいされるものではなく、むしろ討議倫理が成立するためにも重要な前提となる契機を含んでいることをあきらかにしようとした。他の報告者のアドルノの社会批判の限界に関する指摘、参加者との討議により、フランクフルト学派の倫理思想の中でのアドルノ、ハーバーマスの意義について今後の研究に有効な多くの知見を得ることができた。 『西洋哲学の軌跡デカルトからネグリまで』の出版にあたっては全体の編集とともにアドルノの稿を執筆した。筆者が従来より注目しているアドルノの〈いたみ〉に定位する倫理について、簡潔にまとめるとともに、『啓蒙の弁証法』に関してあらためて考察する機会を得て、論文としてはごくコンパクトなものだが、フランクフルト学派の思想を自分なりにまとめる経験をすることができた。 3月にはベルリン芸術アカデミーのベンヤミン・アルヒーフにて、おもにベンヤミンの初期思想に関する調査をおこなった。今年度出版予定の初期ベンヤミンに関する著作執筆のための有益な調査をおこなうことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画であげた研究テーマと研究のなかで新たに浮かび上がってきたテーマについて、着実に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後もひきつづき、フランクフルト学派の倫理思想全般にわたる研究をすすめていくが、24年度は特にベンヤミンの初期思想に重点を置いて研究を進め、単著として出版する予定である。
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