研究課題
本研究の最終年度において、これまでに明らかになった課題を検討するとともに全体の研究成果をまとめ、2011年7月に開催された国際中世会議においてや8月のオックスフォード国際教父学研究集会で発表した。それらを踏まえ、研究成果報告書を二分冊で刊行し、その内容をオーストラリア研究チームとの共同討議において発表した。具体的には、出村は、8月オックスフォードでの第16回国際教父学研究集会に参加し、「心」の概念についてプレナリー・レクチャーを講じた。さらに、シドニーで、オーストラリアカトリック大学とマッコーリー大学との共同セミナーEpistolary Conversations II:Opening the letter of Classical and Late Antiquityに出席し、書簡を資料にしてアウグスティヌス研究を進める方法的問題点について情報を収集した。以上を踏まえ、出村は単著『アウグスティヌスの「心」の哲学:序説』岡山大学文学部研究叢書33(平成23年12月20日)を刊行し、とりわけその第4章に本研究は反映されている。上村は、これまでに入手・整備したテキスト資料とデータベースを活用し、アウグスティヌスによる「貧困」の語り(narrative)、特に「喜捨」に関する言説に独自の「霊性化(spiritualisation)」が成立していることを明らかにし、この点をアウグスティヌスの全著作にわたって検証した。その成果は英国リーズで開催された上述の国際会議において報告され、セッション内でこの問題を討議した。さらに、オーストラリア研究チームがすでに公刊している研究書Preaching Poverty in Late Antiquity(2009)のアウグスティヌスに関連する第4章を翻訳し、成果報告書の別冊として刊行すると共に、報告書本体においてこれまでに発表した論考をまとめた。なお、両名は、それらに基づく研究成果全体を、2012年3月にオーストラリア・ブリスベンで開かれた共同研究集会において報告した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Patristica, supplementary volume
巻: 3 ページ: 69-83
巻: 3 ページ: 85-89