死の臨床とケアの思想的基盤について、キリスト教と仏教における文献学的比較研究をおこない、思想的基盤が日欧においてどのような臨床と実践に結びついているか明らかにした。キリスト教において死は人間の生の条件として捉えられ、生と死を信仰のうちに受け入れる。キリスト教において、死の向かう目標は永遠の生と復活である。したがって死の臨床とケアは、個人が永遠の生と復活に入ることを準備する終末期として重要な意味をもつ。禅仏教においては、苦の現実と生死の苦悩から離れることとして、死そのものに重要な意味を見いだす。生死は涅槃と結びついて理解され、死にゆく人に宗教的な平安と救済をもたらすことが死の臨床とケアの意義として理解される。
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