研究課題
本研究は、ロマネスク芸術にみられる自由自在な造形原理を柱頭という建築部材を対象として、その黎明期から終焉期にいたる展開の軌跡を追うことを目的とする。本研究の特徴は、厖大な数にのぼる柱頭の葉飾り装飾と説話図像の構成およびその配置を扱うに際して、常に柱頭と建築を不可分の関係として考察するところにある。すなわち、柱頭は建築構造体の要となる接合部をなすばかりでなく、柱頭の胴部に刻まれた彫刻が教会堂建築のさまざまな場所のもつ多様な機能にどのように、またどの程度関わっていたかという視点である。平成23年度の研究は、まず、21年度と22年度にフランスで実施した現地調査から得られた研究材料を整理し、『ロマネスク柱頭論』という大きな題目の下に、第1章:建築部材としての柱頭の形体と役割、第2章:建築構造の発展とロマネスク黎明期の柱頭、第3章:葉飾り柱頭の展開、第4章 : 説話柱頭の誕生と説話図像の配置、第5章 : 説話柱頭の諸問題、第6章:ロマネスクの終焉、という章立てを構成した。次に、説話柱頭(第4章と第5章)に内在する本質的な問題、すなわち自己完結性の強い柱頭という立体に一方向の連続性を要求する説話をどのように構成していったかという問題を、扉口(2面柱頭)、玄関廊(3面柱頭)、身廊(3面柱頭)、周歩廊(4面柱頭)、回廊(4面柱頭)に分けて、それぞれの建築部位のもつ機能とその空間を使用する者、見る者といった動的な要素をふくめた関係において考察を進めた。本研究代表者の試みるアプローチによるまとまった柱頭論は未だない。考察と執筆を進めるにあたっては、平成23年9月より4ヶ月間、米国イェール大学大学院付属図書館と同大学院Arts Libralyを利用することができた。
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Histoire, Antique & Medievale
巻: HS.No.30 ページ: 19-21
Actes du Collogue International Arch-I-Tech 2010, 17, 18, 19
ページ: 179-190