1.研究の具体的内容 22年度の調査により、釜山窯の窯道具等の窯業技術が朝鮮系の技術から京都、もしくは肥前の技術へと移行している姿が確認できたことが明らかになった。本年度はこの成果を踏まえ、朝鮮陶磁・京都・肥前の技術との比較を目標としていたが、さらに朝鮮系から京・肥前系の技術へと移行する年代を明らかにすることに焦点を絞り、年代の確かな資料、および根拠となる史料について調査を行った。 具体的には、個人所蔵の資料や釜山窯を最初に研究した浅川伯教の資料を調査し、古史料に登場する原料や技術の記載に見られる日本陶磁の技術との関連について、韓国の陶磁原料学を専門とする研究者と意見交換を行った。また年代の確かな対馬・金石城跡、東京大学構内遺跡から出土した釜山窯片の調査を行った。そのほか御用絵師であった狩野常信が絵付けに関わっていることに着目し、常信関連の資料を収集、絵画と茶碗の比較を行ったが、結果として朝鮮風の変容を行わず、むしろ狩野派絵画の特色を前面に押し出していることが明らかとなった。 2.研究の意義と重要性 以上の調査結果より、延宝9年(1681)の釜山窯の草梁移転に伴い、大幅に技術が日本風に転じる契機となったことが明らかになった。現在までの研究では様式の変化については指摘されてきたものの、具体的な技術の変化とその年代が指摘されたことはなく、意義を求めることができよう。また本研究成果について、最終年度の調査での補足にもとづき発表を行うならば、新たな釜山窯研究の基礎を築くことができ重要性を持つと考えられる。
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