研究課題/領域番号 |
21520097
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
天野 知香 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (20282890)
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キーワード | アンリ・マティス / 植民地博覧会 / 装飾芸術 / フランス / 両大戦間 / 他者表象 / ポストコロニアリズム / 里見宗次 |
研究概要 |
本研究のテーマに基づき、本年度は昨年度に引き続きフランス、およびイタリアを中心とした資料および作品調査を実施した。 1)2011年8月7日から14日まで、パリにおいて20世紀初頭から両大戦間における他者表象をめぐる画像、文献調査、およびケース・スタディとしての画家アンリ・マティスの北アフリカ旅行時の資料調査を実行した。具体的にはパリのケ・ブランリー美術館資料室において他者表象の画像資料の閲覧、旧マティス家においてマティス家所蔵の北アフリカ滞在時の資料閲覧(主に書簡)を行い、さらにフランス国立美術館において文献調査を行った。加えて8月15日から21日にかけては、ポストコロニアリズムを踏まえた現代美術における他者表象を調査するため、ヴェニスで開催されていたビエンナーレをはじめとする展覧会において、とりわけグローバル・マーケットに登場した非西欧出身の現代美術家による作品を調査した。 2)夏のパリ調査によって、特に1931年の植民地博覧会関連資料のうち重要な部分がエクス=アン=プロヴァンスの国立海外古文書館に所蔵されていることが判明したため、12月18日から22日にかけてエクス=アンニプロヴァンスの国立海外古文書館での調査を実施し、植民地博覧会の実施のための実務的な資料を中心に閲覧した。その結果、1931年万博をめぐる主催者側の見解や、とりわけ植民地博物館の建築・展示をめぐる実務の詳細が明らかになった。また12月23日から1月4日にかけては、パリに残されている1931年の植民地博覧会の遺構や同時代の他者表象の作品調査を行った。 3)両大戦間にフランスで活躍した日本人グラフィック・デザイナー里見宗次が日本政府の注文を受けて制作したポスターをテーマに検討を行い、この時代の西欧における他者表象のあり方が、グローバルな社会的政治的背景のもとに日本においても展開されていたことを検証した論文を執竺した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査に関しては、特にケ・ブランリー美術館、国立海外古文書館の担当者の協力を得て、重要な資料を閲覧することができ、大きな進展を見た。ただし図像資料などは未整理で閲覧不可能なものも多く、作品調査の点ではなお課題が残った。全体としておおむね順調な進展といえ、資料の分析を進め、論考の執筆を開始する見通しがたつ段階に至った。
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今後の研究の推進方策 |
資料調査に関してはおおむね順調に進展しているため、今後資料分析を進め、論考の執筆準備へと向かう予定である。ただし、図像資料の収集と作品調査に関しては、なお十分とはいえないため今後もフランス、アメリカ等において平行して調査を進める必要がある。とりわけ作品調査に関しては、所蔵先が不明なものも多く、困難が予想される。またすでに収集した資料も膨大であるため、分析作業のための時間が必要となる。
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