本研究により、(1)植民地主義を背景とした19世紀半ば以降のフランスを中心とした文様や装飾芸術をめぐる批評的、学問的、および手引書など実践的な主な言説における「他者」の概念配置と美学形成との関わりを明らかにし、通常20世紀美術で論じられる「プリミティヴィズム」の構造を明確にした。さらにジェンダー的、民族的「他者」観と結びついた20世紀のモダニズムの言説における装飾否定の構造を示した。(2)両大戦間を中心とした漆に代表される「他者」性を帯びた素材や技法、さらに意匠や図像の流行を、具体的な作例から検証し、アール・デコの特質やモダニズムとの関わりにおいてその意味を明らかにした。
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