研究課題
21年度にはもと障壁画であり、現在は他の形式に改変されている作品として、山梨県久遠寺書院障壁画、名古屋市総見寺所蔵花鳥図4幅、名古屋市興正寺所蔵の花鳥図屏風および唐人物図屏風、京都市無鄰庵内洋館二階貼付絵の調査をおこない、興正寺蔵の屏風については、22年4月に報告をおこない、無鄰庵貼付絵については22年5月に報告をおこなった。他の絵画についても、適宜発表する予定である。また、関連作品として、長野県田中本家博物館所蔵花鳥図屏風、島根県手銭記念館所蔵花鳥図屏風、帝鑑図屏風などの調査をおこなった。興正寺の花鳥図屏風は江戸時代前期、17世紀後半の京狩野様式を示す作品で、現在二曲一双の形式であるが、もともとは幅140cmほどの襖四面分であり、この大きさの襖は16世紀から17世紀の禅宗寺院の障壁画が該当する。さらに、同寺所蔵の唐人物図は、花鳥図と様式的に同一筆者と考えられ、現在六曲一双の形式であるが、もともとはやはり、140cm幅の襖四面分であることがわかった。この唐人物図の画面の一部には一連の襖絵の他の部分から移植された箇所があり、それを考え合わせると、制作当初の図柄をある程度復元することが可能である。興正寺には、この作品の伝来に関する史料が残っていないが、現存の花鳥図と唐人物図が隣り合う部屋の襖絵であり、表裏の関係にあったと推測することが可能である。京都市無鄰庵内洋館二階貼付絵は、桜に孔雀図、鶴図、松図、柳に鷺図という、もともとは別の部屋を構成していたと考えられる四種の絵画からなるが、いずれも、当初の建物の様相はとどめていない。しかし、このなかでもっとも保存状態が良好で画面の大きい桜に孔雀図を見ると、制作年代は17世紀中頃の狩野派系の作品であることがわかり、襖の引手跡が見られないことから、床貼付絵などの形式であったことが調査の結果判明した。
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Civil Engineering 245
ページ: 8-10
『美術館教育的伝統與創新』(International Symposium on Art Museum Education, 2009)
ページ: 40-50