本研究は、1. 英国モダニズム美術において重要な潮流のひとつであるヴォーティシズムとその主導者ウィンダム・ルイスを扱い、彼が美術界で果たした役割をとくに造形的局面から考察すること、2. ルイス周辺の造形運動(ブルームズベリー・グループ)を射程とし、これらの影響関係について同時代の批評や資料に基づいて検討することを目的としている。 平成22年度は、上記二種類の考察のうち、1. ヴォーティシズムとルイスに関しては、8月1日に、意匠学会で研究発表を行った。この発表は本研究の中間報告に位置づけられる。2. ブルームズベリー・グループの活動に関しては、関連機関で調査を行った。具体的には、8月パーマー美術館(ペンシルヴァニア)における大規模な回顧展"A ROOM OF THEIR OWN : THE BLOOMSBURY ARTIST IN AMERICAN COLLECTION"を訪問し、企画者の一人であるペンシルヴァニア州立大学のクリストファー・リード氏と意見交換を行った。12月には、ブルームズベリーのデザインを商品化したLaura Ashley社のアーカイヴを訪問し、資料調査および作品撮影を行うとともに、アーキヴィストであるアンジェラ・ジェフリー氏と情報交換を行った。そこから、ブルームズベリーのデザインに関して、有益な情報を得た。ほかに個別の作品や文献調査に関しては、フィラデルフィア美術館、フレンドハウス図書館、英国図書館、テイト・ブリテン、テイト・モダン、コートールド・ギャラリー、ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムを訪問した。入手した資料・情報は整理し、現在解釈を進めている。とりわけ、Laura Ashley社の調査内容については、次年度のアート・ドキュメンテーション学会で報告を予定している。
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