イスラーム化以前におけるインドネシアの宗教儀礼に使用された法具を研究対象に、当地及びヨーロッパの博物館・美術館等21ヶ所の所蔵品、またジャワ島の遺跡における彫像・レリーフ等の調査研究を行った。その結果、密教儀礼の法具である金剛杵、金剛鈴一式が確認でき、その推定制作年代から、当地に9世紀には密教儀礼が行われていたと推察、また鈴杵の形状が「閉鈷式」(8~10世紀頃の中部ジャワ)、「開鈷式」(10~15世紀頃の東部ジャワ)に大別できることから、王朝の移行を示すものと考えられた。こうした法具分析が、アジアにおける密教の伝播、及びアジアの宗教美術を考究する上で、一判断基準になり得るものと結論づけた。
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