昨年度に引き続いて、道宣の著作『集神州三宝感通録』巻上の「階鄭州超化寺塔十五」から「雑明神州山川蔵宝等縁二十」条(『大正新脩大藏経』巻52、408頁b~410頁a)について現代語訳と詳細な注釈をおこなった。注解に際しては、史書・地誌・僧伝などから関係記事を博捜し、遺物や遺迹が確認できるものであればその調査報告や先行研究を洗い出しつつ、本著作から可能な限り美術史料的な情報と論点を抽出することに務めた。 注釈を付した箇所は全部で100を数えるが、そのうち「鄭州の超化寺」「塔の立地」「床」「塔基の構造」「細腰」「崑崙」「懐州の妙楽寺」「并州の浄明寺」「楡社の塔」「誌公」「高麗と高句麗の名称」「土塔」「高句麗の木塔」「儀相」「日本の阿育王塔」「益州の空慧寺」「七仏龕」「玉華宮寺」「一層碑塔」「起塔の理由」「護塔善神」「塔側の古窯」「大興国寺」「相州の大慈寺」「道宣の相州行」「太子思惟像」「遊豫園」などの項目については、上記の見地に立った本研究独自の論述をおこなった。 また研究協力者である清水紀枝・大島幸代・稲葉秀朗・小野英二が該当箇所から抽出した課題について考察を深め、それぞれ「後白河院政期における阿育王塔の制作について」「護塔神について」「北周の尉遅廻と奉仏-拉梢寺摩崖大仏を主として」「唐高宗期扶風法門寺阿育王塔にみる仏塔と仏像の関係」と題した研究ノートをまとめた。なお、大学院生11名の研究協力を得た。 これらの成果は申請時に計画したとおり広く意見を聴取して改正を加えるべく、2011年2月に冊子体の形で公開し、国内外の関連分野の研究者・研究機関に配布した。また今年度に発表した下記の論文・学会報告は本研究で得た知見をもとにしたものである。
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