研究課題
正倉院宝物として残されている螺鈿器は技法的に大きく木地螺鈿、漆地螺鈿、樹脂地螺鈿、玳瑁地螺鈿の四種に分類される。またその制作地については諸説あるが、木地螺鈿と樹脂地螺鈿は中国唐代に造られたものと理解されている。しかし、この後、この両者の技法によって螺鈿が造られることはごくまれになり、中国を含めその後の歴史はほとんど明らかとなっていない。こうした中で、ベトナムでは19世紀頃から突如として木地螺鈿制作が盛んに行われるようになる。今年度の調査ではこうしたベトナムの木地螺鈿技術について詳細に現地確認し、正倉院に残る木地螺鈿や玳瑁地螺鈿と同様の技術がベトナムの螺鈿制作にも使われていることが理解できた。またインドは、東南アジアまでの東方アジアと西方アジアとをつなぐ結接点と言える位置でもあるが、その螺鈿技術についてはほとんど明らかにされていない。こうした中、今回初めて西北部ラジャスターン州ウダイプールの螺鈿工房などにおいて調査を実施し、現代インドの螺鈿は、木地螺鈿と同類構造である厚手貝片を対象物へ象嵌する技法と、樹脂地螺鈿のように厚手貝片を対象物の地に貼り付け、地と貝表面との段差とを合成樹脂などの素材で埋めていく技法との2種類が存在していることが明らかになった。この他、これまでの研究成果の一部を、九州国立博物館研究紀要『東風西声』第6号にて「ベトナムの螺鈿」として報告した。
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九州国立博物館紀要 東風西声
巻: 第6号 ページ: 74(1)-33(42)
International Conference "Study of Oriental Lacquer Initiated by H.R.H. Princess Maha Chakri Sirindhorn for the Revitalization of Thai Wisdom, preliminary report"
ページ: 16-16