本研究はモダニズム後期のヴィジュアルデザインについて、モダニズム初期に形成された芸術思想と表現方法が、モダニズム後期(1940年代~1950年代)における国家的プロパガンダと資本主義型消費社会拡大のなかで、いかに視覚文化の環境を構成したかを、複製メディアにおけるグラフィックデザイン、および視覚的展示デザインの観点から探究した。最終年度であるため、研究代表者は研究協力者による調査結果とあわせて、分析と考察を行い、研究成果を以下の方法で公表した。 (1)<モホイ=ナジイン/モーション>展を企画・開催し、井口壽乃監修『モホイ=ナジ視覚の実験室』(国書刊行会、2011)を出版した。国際シンポジウム「モホイ=ナジ再考」(京都国立近代美術館、7月)にて開催し、研究協力者のK.パシュート教授、O.ポーター教授ならびに国内の研究者と意見交換をし、中欧と戦後の米国ならびに日本との関係について議論した。 (2)ヨーロッパから米国への亡命芸術家の1940年代の活動について、L.モホイ=ナジとフレデリック・キースラー、ジョルジュ・ケペシュについて調査し、「モホイ=ナジの書簡にみる戦時下の亡命芸術家の苦悩」『コンフリクトのなかの芸術と表現文化的ダイナミズムの地平』(大阪大学出版会、2012)にまとめた。フレドリック・キースラーとジョルジュ・ケペシュに関しては調査を継続し、次年度以降、成果公表をする予定である。 (3)戦後の日本における欧米との関係については、「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とヴィジョン」関連シンポジウム第5回「空間から環境へ:同時代のインターメディアな活動と万博」(森美術館、12月18日)にて講演を行った。
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