本研究は、現在ケンブリッジ大学図書館が所蔵している菊亭家旧蔵雅楽関係資料に関して、音楽学的見地からその史料価値を多角的に検証すべく、その基礎的な調査を行うものである。ここでいう、ケンブリッジ大学図書館所蔵の菊亭家旧蔵雅楽関係資料とは、Laurence Picken博士(1909-2007)が昭和44~45年(1969~70)にかけて購入および入手した雅楽関係資料のことをさす。本研究の初年度にあたる平成21年度は、ケンブリッジ大学図書館に赴き、現物およびその周辺資料の調査を行う、ということに最も重きを置いた。その目的のために、まずは国内において必要な準備や調査を行ったうえで、年度末の3月に渡英した。現地では、菊亭家旧蔵雅楽関係資料の、資料としての価値を検討するための書誌データを取るとともに、遺された周辺資料にもあたり、菊亭家旧蔵雅楽関係資料が日本からイギリスへ渡った当時の経緯に関する調査をも含めたリサーチを行った。そして、ケンブリッジ大学図書館所蔵の菊亭家旧蔵雅楽関係資料のコレクションとして、その目録を作成すべく、収集したデータの整理にとりかかった。また、海外調査と並行して国内に於ける調査も行った。現在、菊亭家旧蔵資料のコレクションを所有していることで知られているのは主に京都大学と専修大学であるが、そのうちの専修大学図書館が所蔵する菊亭文庫は、Picken博士が入手したのと同時期である昭和45年に入手しているという理由から、専修大学の菊亭文庫の調査を開始した。
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