本研究は、現在ケンブリッジ大学図書館が所蔵する菊亭家旧蔵雅楽関係資料に関して、音楽学的見地からその資料について検証すべく、基礎的な調査を行うものである。ここでいう、ケンブリッジ大学図書館所蔵の菊亭家旧蔵雅楽関係資料とは、Laurence Picken博士(1928-2007)が昭和44~45年(1969~70)にかけて購入および入手した雅楽関係資料のことをさす。 本研究の二年目にあたる平成22年度は、前年度に行ったケンブリッジ大学図書館の楽譜や楽書、およびその周辺資料の所蔵調査に基づき、個々の資料の概要を捉え、その整理を行った。現在所蔵されている資料の点数、個々の内容を確認したうえで、ケンブリッジに遺された、資料購入に関してのPickenの書簡や関連書類等の周辺資料と、所蔵資料との照合作業などを行って整理した結果、Pickenを通じてケンブリッジが資料を所蔵するまでの経緯の概略が明らかとなった。また、Pickenが行った雅楽研究において、それらの資料がどのような位置を占めていたのかということも明らかとなった。そして、日本で所蔵が確認されている菊亭家の資料のうち、ケンブリッジと同時期に入手された、専修大学が所蔵する資料と共通点のある資料が確認されたため、それらの関連性をより明らかにさせるべく、照合させるための作業を開始した。上記の結果は10月に東洋音楽学会第61回大会にて発表した。 年度末の3月には渡英し、一年間に行った作業の確認のための更なる詳細な資料調査を現地にて行った。そして最終年度にあたる来年度に手がける、報告書の作成を第一に念頭に置いた上で、書誌データの確認を行い、報告書の内容に関してを検討、その方針を固めた。
|