英国ケンブリッジ大学図書館には、Laurence Picken(1909-2007)が購入した菊亭家旧蔵の雅楽関係の楽譜や理論書が43点、54冊所蔵されている(43点はケンブリッジの書架番号による点数、54冊は実際に存在する冊数)。菊亭家が所蔵していた膨大な資料群は、おもに京都大学や専修大学各図書館などが所蔵していることが知られており、そこには宮廷雅楽を伝える非常に重要な資料が多く含まれている。しかしケンブリッジ大学にも所蔵されているという事実やその詳細、所蔵に至った過程などについてはほとんど知られておらず、現地においても資料の詳細を把握しているとはいえない状態にあった。そこで本研究の目的は、ケンブリッジ大学図書館が所蔵する菊亭家旧蔵雅楽関係資料に関して、現地における基礎的な資料調査にもとづいたうえで資料に関する事柄を可能な限り明らかにし、以降この資料の存在を前提として諸研究を行う指針となるような結果を残すことにあった。 対象資料が海外にあるため、現地に赴くことによって確認されることを中心に研究作業を進め、資料の購入経緯や現地における所蔵および管理の状況、所蔵内訳やその内容を明らかにさせることができた。また諸資料の性質を知るために、適宜日本国内で所蔵している菊亭家旧蔵資料と対照させる等の補足的な並行作業を行い、国内所蔵の菊亭家旧蔵雅楽関係資料との関係についても一定の見解を得ることができた。 本研究の最終年度にあたる2011年度は、3年間にわたる作業をまとめ、成果を公開することを念頭に研究経過を東京音楽大学研究紀要に掲載、渡英して最終確認作業を行うなどの経緯を経て報告書の作成を行った。
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