映画は様々な場で撮影した映像をつなげることによって、出来事を語ったり、主張を述べたりする。その単位となるのは、ショットまたはカットを呼ばれる連続的な映像を記録しているフィルム片である。ショットは内容を語るためにつなげられるので、ちょうど文章をなす単語のようなものにたとえることができる。実際、物理的には、あるフィルム片にどんなフィルム片をつなげることもできるが、内容表現上、つなげることのできるショットは限定されていて、作り手はいくつかの可能性のうちのどれかを選ぶのである。そしてその選択に、ものの考え方が反映する。多くの作品を通しては、時代性や作家性がにじみでる。 その実証の手続きとして、ショットの定量的分析を提案し、作品ごとにショットをいくつかの指標から統計的処理を目指す。そのためには対象とする作品を偏りなく選ぶ必要がある。その選択に試行錯誤を重ね、各年度の受賞作品ともっともヒットした作品が何かを調査した。 一方、こうした定量的な計量をするために、ショット分析ツールを開発した。このツールは画像認識技術を応用してショットの切れ目を自動的に検出する分析部分と、分析結果を視覚的に見る表示部分からなる。分析で得られたショットの情報はXMLファイルに記録され、表示の際にはXMLファイルを検索することで、最も長いショットや全ショットの平均時間などを求める事ができる。ただし画像認識では緩やかにトランジションするなどの処理が施されたショットの切れ目を検出することは難しいので、不完全な箇所は人間が目で見て修正できるようなインタフェースも用意した。このツールを用いて比較対象となる映画のショットのデータ化を始めた。
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