平成21年度は、ル・コルビュジエが1911年の「東方への旅」で描いたスケッチや撮影写真などと彼の建築作品との参照関係、あるいはスケッチや撮影写真などと彼の建築作品を含めた近現代建築全体における相互参照構造が認められるかどうかに特に注目しながら、フランス、ドイツ、スイスを中心に調査研究を行った。それらを静止画・動画に記録して、分析のための資料とした。主な調査作品は、パリ及び周辺のサヴォワ邸、クック邸、ナンジュセール・エ・コリ街のアトリエ、救世軍本部、スイス学生会館、ブラジル館、シュツットガルトのヴァイセンホフ・シードルンクの住宅、ル・コルビュジエの故郷であるスイスのラ・ショー=ド=フォン及び周辺のファレ邸、ファーヴル・ジャコー邸、ジャクメ邸、ジャンヌレ=ペレ邸、ストッツァー邸、シュウォブ邸、フランスのベルフォール近くのロンシャンの礼拝堂などである。同時に、フランス、ドイツ、スイスの近・現代建築作品との多くの具体的参照関係を見出し、記録することもできた。特にラ・ショー=ド=フォンでは、数日間滞在していくつかの施設において多くの史料を複写・撮影した。「東方への旅」前後からパリに出る以前の、彼と家族や友人、先生などと交わした手紙や、「東方への旅」における彼のスケッチや写真、この時期の彼に大きな影響を与えた人物による数多くのスケッチなど、その後、本研究を進める上での重要な史料も収集でき、初年度として十分な成果を得られたものと思われる。
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