平成22年度は、ル・コルビュジエが1911年の「東方への旅」で描いたスケッチや撮影写真などと彼の建築作品との参照関係、あるいはスケッチや撮影写真などと彼の建築作品を含めた近・現代建築全体における相互参照構造が認められるかどうかに特に注目しながら、フランス、スイス、イタリアを中心に調査研究を行った。それらを静止画・動画に記録して、分析のための資料とした。主な、調査作品は、パリのラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸や、ル・コルビュシエの故郷であるスイスのラ・ショー=ド=フォンのジャンヌレ=ペレ邸、コルソーの「母の家」などである。同時に、フランス、スイスの近・現代建築作品との多くの具体的参照関係を見出し、記録することもできた。パリでは、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸内にあるル・コルビュジエ財団を数日間訪問し、多くの史料を複写・撮影した。ラ・ショー=ド=フォンでは、前年度の調査で知己を得たじヤンヌレ=ペレ邸の保存活用とル・コルビュジエ研究を行っているメゾン・ブランシュ財団の主催者が4日間に渡って開催したシンポジウム"LaChaux-de-Fonds-Chandigarh-Brasilia:Utopie et realite de 1'urbanisme au XXe siecle"に招かれ、参加した.各国から訪れた研究者などと交流した.また、前年度に続き、主にラ・ショ=ド=フォン市立図書館において多くの史料を複写・撮影した。イタリアではピサなど、「東方への旅」の旅程の都市で描かれたスケッチの現場などを調査した。昨年度に引き続き、「東方への旅「前後からパリに出る以前の.彼と家族や友人、先生かどと交わした手紙や「東方への旅」におけるイタウテでの彼のスケッチや写真、この時期の彼に大きな影響を与えた人物による数多くのスケッチなど、本研究を進める上での重要な史料も収集した。
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