研究課題
本研究は、1930年代に成立する国際視覚言語思想としてのアイソタイプの思想の世界への普及の過程を明らかにすることを目的としている。2009年度は1930年代のアメリカにおけるアイソタイプの受容過程の解明を目的として、2009年9月13日から10月5日にかけて、ミネソタ大学、ノースカロライナ大学、スミスカレッジの各資料図書館、ニューヨーク市立図書館を訪問し、収蔵されている書簡等の一次資料を対象に調査を行った。その結果、主に次の2点の重要な新知見が得られた:1)ノイラートのアイソタイプ運動の拠点であったムンダネウム・ウィーンのアメリカへの支部設立をめぐる活動の実態。従来、この支部設立についてはしばしば誤解のある記述が見られたが、支部設立のための委員会が結成され、約1年間活動を行ったが結局設立に至らなかったことが判明した。2)ノイラートとモドレイの関係について。モドレイは1933年初頭からすでに独自の活動を開始しており、この時期から両者のあいだに一種の競合関係が生じていた。特に1936年以降モドレイは共同作業によるシンボルの標準化を提唱し始めており、他方でノイラートはこの構想に否定的だったことが分かった。以上の事実から戦後の国際視覚言語思想の成立にとってはノイラート以上にモドレイの貢献が重要であるとの仮説が得られた。研究成果として、"Rigor and Relevance in the International Picture Language"をInternational Association of Societies of Design Research主催の国際会議(10月、ソウル)にて発表した。また、「Isotype Movement in America(仮題)」と題する論考を、レディング大学タイポグラフィ&グラフィックコミュニケーション学科(英国)が編集し刊行を計画しているアイソタイプ研究書に寄稿した(2010年度内に出版予定)。
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Proceeding of the Conference "Rigor and Relevance in Design", International Association of Societies of Design Research 2009