箏曲の各種類(平安時代の宮廷箏曲、安土桃山時代からの筑紫箏曲、江戸時代からの当道箏曲、大正・昭和時代からの近代箏曲、現代箏曲、現行雅楽箏曲)計6種類について、奏法の特色を抽出すべくそれぞれ以下の調査を開始した。 宮廷箏曲については、平安時代末藤原師長『仁智要録』、平安時代末『夜鶴庭訓抄』、鎌倉時代『類事治要』、鎌倉時代初『胡琴教録』、1327年綾小路有頼『糸竹口伝』等の解読と、現行雅楽箏曲の奏法を参考にしながら復元作業を行った。その結果、現在雅楽箏曲で行われている奏法とは異なる奏法があったことがいくつか判明した。たとえば、右手奏法に関して、現在中心的に使用されている「閑掻」「早掻」の各掻き手の奏法は、宮廷箏曲ではその別はなく、現行雅楽箏曲と同じ記譜でありながら「かかげ合わせ」と称する和音奏法だった可能性が強まった。また、現行雅楽で「連」と称する奏法は、親指で手前から向こうへグリッサンドする奏法だが、宮廷箏曲では人差指と中指とで向こうから手前に2~3絃をグリッサンドする奏法で、両者は名称は同じだが内容は異なることが判明した。 当道箏曲の奏法については、特に地歌箏曲の三味線奏法からの影響を考察すべく調査を開始した。 近代箏曲の奏法については、宮城道雄作品の楽譜分析をして奏法と音楽との関係の考察を開始すべく楽譜を収集した。 現代箏曲の奏法については、多種多様化している様々な傾向を網羅すべく、現代箏曲奏者の上演曲目調査を開始した。
|