戦時下および冷戦期において、ポーランドの前衛美術の果たした役割について調査を行った。またポーランドにおける前衛のルーツとその発展についての研究を進め、芸術家たちが社会において果たした役割や政治との関わりについても注目した。冷戦期から雪どけを経て、体制転換後に大きく変化したポーランド社会と、それにつれて変化しながら現代に至る前衛美術のあり方に関しても引き続き研究を進め、激動期における芸術家の在り方や役割について考察した。ポーランドの作家、ジミェフスキがディレクターをつとめる「ベルリン・ビエンナーレ」に出品されたポーランド美術について調査し、またヤギェウォ大学(クラクフ、ポーランド)美学研究所教授のクリスティーナ・ヴィルコシェフスカ氏との意見交換を実施し、協力を得た。クラクフやワルシャワ(ポーランド)において、現代美術の状況についてワルシャワ近代美術館などの協力を得ながら調査し、資料を収集した。カッセル(ドイツ)で開催される国際展「ドクメンタ」にも赴き、国際展におけるポーランド美術の状況についても合わせて調査を行った。世界各国の学芸員たちとの意見交換を実施した。前年度に引き続き、東京外国語大学ポーランド文化研究室の関口時正教授並びに神奈川県立近代美術館館長の水沢勉氏、大阪大学の圀府寺司教授、埼玉大学の井口壽乃教授にも協力を依頼した。
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