本研究は、株式会社日本蓄音器商会(日本コロンビアの前身)が舞踊家の協力のもとに『視るレコード』として昭和12年から15年に発行した「舞踊小唄名曲集(SPレコード48枚)と舞踊小唄解説集(舞踊写真入り解説書96冊)第一集~四集」を資料としながら、昭和初期の小唄の文芸的な特徴と、その内容を身体化した江戸小唄振り・小唄舞踊の『粋(意気)』な表現技法の特徴を分析することによって、昭和初期の小唄をめぐる座敷舞踊文化の一様相を浮かび上がらせることを目的とするものである。 研究二年目の平成22年度は、初年度において分析対象とした舞踊曲50曲の見直しとともに、解説書のある第二集の6曲の分析を行った。また、解説書がないレコードの歌詞18曲(主として第二集の西條八十の作詞)の書き起こしを行った。この歌詞の書き起こしにおいて、「西條八十全集」に収められている同題歌詞と、レコードに吹き込まれている歌詞に異なる部分がみられることが解り、舞踊表現との関わりで本来の歌詞に変更が加えられている可能性に関し、他の曲も含めて舞踊と唄の関係の新たな検討課題が見つかった。
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