本研究は、株式会社日本蓄音器商会(日本コロンビアの前身)が舞踊家の協力のもとに『視るレコード』として昭和12年から15年に発行した「舞踊小唄名曲集(SPレコード48枚)と舞踊小唄解説集(舞踊写真入り解説書96冊)第一集~四集」を資料としながら、昭和初期の小唄の文芸的な特徴と、その内容を身体化した江戸小唄振り・小唄舞踊の『粋(意気)』な表現技法の特徴を分析することによって、昭和初期の小唄をめぐる座敷舞踊文化の一様相を浮かび上がらせることを目的とするものである。 平成23年度は、研究三年目のまとめの年であり、不足している資料の収集と、未着手の舞踊曲の分析を進めた。収集できなかった舞踊解説資料が14曲あり、継続的に収集活動を続けていく予定である。 この舞踊小唄名曲集は、西洋音楽やダンスが日本に流入する時期にあって、日本の情緒を織り込んだ日本の小唄音楽と、日本の舞踊の文化を維持・普及するために企画されている。日本の小唄の粋な内容やニュアンスを残しながらも、西洋舞踊の振付家も登用したり、舞台で上演することも意識したドラマチックな振付傾向にあり、近代化・酉洋化する社会のニーズを意識したものとなっている。また、戦争の影響が徐々に曲の内容・振付に色濃く反映しているのも、この名曲集の特徴である。
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