19世紀前半から20世紀初頭のポピュラー系公開演奏会について以下のような調査・研究を行った。 1、同時代資料および文献データベースによる演奏会データの収集と整理 同時代資料(新聞)としてThe Illustrated London News、同時代資料(新聞、雑誌、書籍)の情報を含む文献データベースとしてThe Times Archive、British Newspapers、Google Books、Repertoire International de la Presse Musicale等を用い、まずは18世紀末から20世紀前半にわたる「ポピュラー系演奏会文化」の大きな流れを把握した上で、主に19世紀中葉のロンドンに関して具体的な演奏会データを収集、コンピュータ上で整理をしつつ、考察。当時の「ポピュラー」なレパートリーに様式上の階級差はほとんど存在せず、宮廷舞踏会から上流中産階級のための高価な演奏会、さらにより安価な庶民向け演奏会に至るまで、同様の演目が共有されていたことを確認。(作業は継続中。) 2、大英図書館における楽譜調査 大英図書館所蔵の同時代の楽譜から、主に19世紀中葉のプロムナード・コンサートで活躍したミュザール、ジュリアン、ウェイパートの作品を中心に調査。所蔵目録上では不明であった多数の管弦楽総譜(印刷譜)とジュリアンの自筆譜1点(ウェーバー『魔弾の射手』抜粋)の存在が確認でき、その概略を調査した。 3、同時代楽譜に基づく具体的な演目の復元 大英図書館所蔵の楽譜の中から、ミュザールの《エコーのカドリーユ》とジュリアンの《大英陸軍カドリーユ》について総譜を復元。後者については吹奏楽編成から管弦楽編成への編曲も行った。
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