21年度よりの定点調査として、京都、名古屋、関東地域における南アジア音楽の奏演記録調査を行った。京都においては、公共ホールが募集する市民参加型芸術活動や、大ホールを利用した日本人による南インド舞踊の奏演記録を確認、実際の奏演の観察などを行った。全体として、舞踊に重点をおいた受容の把握と担い手へのインタビューを行った。 関西、京都市地域に関しては、主に周知目的で配布されるチラシの収集、Twitterなどのインターネット上に流される情報を観察した。当該年度においても、この地域における奏演活動は盛んであることを確認した。また名古屋地域の音楽拠点においても活発な活動が継続しており、特にインド音楽の啓蒙活動の萌芽も観察された。 インタビューからは、音楽受容者らが相互に情報交換を行いながらある種の連帯感を持つ事例、逆にインド本国における師匠の違いや音楽への関わり方の違いなどから相互に葛藤を生じる事例などが確認できた。 奏演活動における「変容」の事例として、さまざまな舞台を観察するとともに、これらを確認できる録音物の収集を行った。今後の考察の基礎的資料として利用したい。 当初予定していたCDなどの発行物制作者へのインタビューは、対象者との調整の困難さのため実現できなかった。次年度での課題としたい。 また応用音楽学的見地から、研究代表者が観察ばかりではなく、積極的に受容を援助する試みも行った。 受容モデルとして、個人レベルにおける異文化音楽受容を「私的受容」、制度に基づき組織・機関などによる受容を「公的受容」と位置づけた上で、現在進行中の受容を「ネットワーク型受容」と定義した。これは公私の間にある受容空間であり、かつ南アジア的音楽以外の音楽文化の担い手との関係性の中から変容を引き起こす変容空間でもあると考える。次年度において、この受容モデルを詳細化する。
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