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2009 年度 実績報告書

ドイツ現代美術におけるナチズム/ホロコーストの記憶表象研究

研究課題

研究課題/領域番号 21520162
研究機関武蔵大学

研究代表者

香川 檀  武蔵大学, 人文学部, 教授 (10386352)

キーワード美術 / 記憶 / ドイツ / ナチズム / ホロコースト / 現代アート / 表象文化論 / ジェンダー
研究概要

本年度は、ドイツの女性美術家レベッカ・ホルンの作品研究と、歴史ミュージアムにおける展示研究の2点が研究の中心であった。ホルンがドイツ・ミュンスター市の歴史建造物内に制作したアート作品をもとに、歴史的な出来事の現場におけるアート作品が、どのような想起を可能にするかを、とくに客体(他者)の認識という点で身体感覚との関連性に注目しつつ考察した。その結果、歴史をあらかじめ文化的記憶として書かれた集合的記憶の物語として捉えるのではなく、身体感覚による「脱主体化」された心理的レベルにおいて認識する構造が明らかになった。そこにはまた、歴史のなかで他者化されてきた女性の表現というジェンダーの視座とも符合する点があった。この成果は、ドイツ学会フォーラムや東京都現代美術館でのレベッカ・ホルン展関連講演で発表したほか、ドイツ学会の学会誌ならびに所属研究機関である武蔵大学の紀要『人文学会雑誌』に論文として発表した。
もう一つの研究テーマである歴史ミュージアム展示については、フランクフルト歴史博物館の協力を得て、同館が1980年に実施した「女性の日常と女性運動1890-1980」展カタログや資料を調査し、日本の歴史展示の現状を踏まえつつ、女性の日常経験を歴史展示に反映する工夫を具体的にまとめた。また、同館に付設された女性美術家ジークリット・ジグルドソンの歴史アーカイヴ作品に注目し、歴史展示と現代アートとの協働についても考察した。この研究成果は、日本学術会議の史学委員会が開催したシンポジウム「歴史教育とジェンダー」で発表し、同団体が編纂する『学術の動向』5月号に執筆したほか、2010年度内に同シンポジウムを書籍化した単行本にも分担執筆する予定である。
昨年夏に行なったドイツでの調査で、上述のジグルドソンの作品実見と作家インタヴューを行なうことができ、非常に大きな成果を得た。平成22年度はこの作家・作品研究をメーンに、アーカイヴ的な現代美術の記憶表象について考察を深めていきたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 空間の経験と<場>の記憶-レベッカ・ホルンの<独身者の機械>2010

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 雑誌名

      日本ドイツ学会編『ドイツ研究』 第44号

      ページ: 56-66

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ミュージアムとジェンダー-展示による経験の可視化をめぐって2010

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 雑誌名

      日本学術会議編『学術の動向』、日本学術協力財団発行 2010年5月号

      ページ: 76-78

  • [雑誌論文] 心理的トポスとしての<場>の記憶-レベッカ・ホルンの<花嫁機械>2010

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 雑誌名

      武蔵大学人文学会雑誌 40周年記念号

      ページ: 572-607

  • [雑誌論文] 越境する記憶-現代アートの日独比較から」、高麗大学校日本研究センター2009年度国際学術シンポジウム「グローバル時代の外国研究と自国研究」(主催:高麗大学校日語日文学科)2009

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 雑誌名

      高麗大学校日本研究センター編『日本研究』 vol.12

      ページ: 87-102

  • [学会発表] レベッカ・ホルンの<花嫁機械>2010

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 発表場所
      東京都現代美術館
    • 年月日
      20100100
  • [学会発表] 人形愛としての美術-古代彫刻から球体関節人形まで」2010

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 学会等名
      目黒区東山社会教育館 講座「女性と人権-美術作品に表された女性像から見えるもの」
    • 発表場所
      目黒区東山社会教育館
    • 年月日
      2010-01-27
  • [学会発表] ミュージアムとジェンダー-展示による経験の可視化をめぐって」、2009

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 学会等名
      日本学術会議 史学委員会シンポジウム「歴史教育とジェンダー-教科書からサブカルチャーまで」主催:日本学術会議・史学委員会 歴史学とジェンダーに関する分科会
    • 発表場所
      日本学術会議(東京都港区六本木)
    • 年月日
      2009-12-13
  • [学会発表] 現代美術を視る-現代アートから記憶がみえる2009

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 学会等名
      サマー・アート・スクール「鑑賞-見ることを問い直す8つのエクササイズ」(主催:クリエイティヴ・アート実行委員会、共催:東京都教育委員会)
    • 発表場所
      国立オリンピック記念青少年総合センター
    • 年月日
      2009-08-01
  • [学会発表] 空間の経験と<場>の記憶-レベッカ・ホルンの<独身者の機械>2009

    • 著者名/発表者名
      香川檀
    • 学会等名
      日本ドイツ学会第25回総会、フォーラム「イメージとテクストによる記憶の技法-キーファー/ホルン/ゼーバルト」
    • 発表場所
      共立女子大学
    • 年月日
      2009-06-20
  • [図書] ジェンダー史叢書4『視覚表象と音楽』2010

    • 著者名/発表者名
      香川檀(分担執筆)池田忍/小林緑 編著
    • 総ページ数
      325、4
    • 出版者
      明石書店

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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