研究の為の検体に対し、演奏能力の基礎的諸要素(音楽聴取の為の音感、読譜、音楽リズム、楽句及びフレージング等)の能力について検証した.その結果総合点としてA組=92/100、B組=87/100と認められた。これらの結果を基に、演奏のための音楽基礎能力が演奏の場に与える影響について以下の方法で検証を行った。先ず、聴覚による音楽記憶力について、検証のためにA.Grethaninoff作曲op118-IVL'Ombre(1~12小節)を用い通奏で6回聴いた後、直ちにピアノで暗譜演奏を試みた。その結果、A組のメンバーは全員(3名)最後まで演奏し得たが、B組のメンバーは未完成が1名、複数回の弾き直しが1名、最後まで通しえたのは1名であった。この結果から、曲を理解し記憶する為には聴覚(音感)の重要性を検証することが出来た。視覚による同様な検証結果は両組の大きな差は認められなかった。使用曲は、S.Prokofieff作曲op 12-7(1~12小節)であった。聴覚による記憶ではしっかりした音高把握(音感)が重要な要素として認められるが、視覚による記憶では音感による差は認められなかった。更に平成21年度に実施したピアニスト及び音大ピアノ科教授等による専門家のアンケートの検証結果から、ピアノ演奏において特に重要な項目の一つに、音楽リズムと楽句、及びフレーズの理解とその表現力の指摘が検証された。この点について検体の理解度を検証するために次の曲を用いた。F.Chopin作曲Nocturnunes op9-1.2である。先ず検体が演奏を行い、次にDaniel Barenboim演奏のCDを聴き、その音楽リズム及びフレージングの理解と表現法を捉える為の検討を行い、その結果の検体の変化を再度の演奏を通して検証した。その他、年度内に和声分析、対位する楽節の音楽語法表現等、様式の異なる17曲を用いて研究を実施、はっきりと能力向上の成果を確認することが出来た。
|