研究概要 |
本研究は初年度実施から3年目になり、検体学生の音楽的基礎能力については総体的に見て想定していたレヴェルまでの能力向上が認められた。しかしながら音楽語法の分野において僅かに物足りなさを感じ、更なる能力向上のための研究を23年度の中心課題として実施した。その為には、「フレージング」の理解及び「和声感の情緒性」等、この2項目について重点的に研究を行う為の教材として、ChopinのNocturnを使用した。音楽語法の理解による音楽表現には、旋律が持っている「音楽的アクセントによるグルーピング」の理解とその表現法が必要条件であり、これら2項目の能力を確立するための研究が、音楽能力の最重要な音楽語法を確立する確かな行程であることが検証された。フレーズ表現では、人の言語と同様に、終止を表現する場合には幾らかトーンを下げテンポを緩める等、言語の所謂呼吸と同様の手法により纏りを示すことが、この表現を可能にするのである。つまり音楽の「センテンス」をまとめる(グルーピング)表現法の一つである。この研究をさらに深める為には、フレーズを形成する「楽句」の理解が必要であり、「楽句」もそれぞれ小さな終止(まとまり)を持っているのである。各楽句は、時には「問いと答え」であったり又時には「再確認」であったりと、正に人の対話に置き換える事も可能である。「和声感」は、これら音楽のセンテンスが持つ情緒的内容を支配する力があり、ここでも音楽的緊張、弛緩によるリズム的要素および終止感等の音楽語法を認めねばならない。この様な音楽語法の理解を確認する為には、曲の詩的内容の理解による表現、つまり演奏がなされなければならない。この研究目標達成の為に更にMozart Klavier Sonate K.331及びBeethoven Klavier Sonate Op.27-2,Tschaikowsky Op.37a四季より一月、四月、六月、Chopin Ballade Op38を研究課題に取り上げた。その結果十分な演奏能力の確立が認められ、研究結果を冊子にまとめる事が出来た。
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