本研究は、アニメやマンガを含む日本のSFファンタジー・コンテンツが海外でどのように受容・評価されているかについて、美学的・文化史的な分析評価と法・政策・マネジメントのレベルでの議論を融合することを目指している。二年目に当たる平成22年度は、以下の点について文献等による検討及び北米(長澤)、欧州(立岡)での現地調査を行い、以下の成果を見た。 1. 海外における受容の変化:マンガ(コミックスおよび雑誌)の受容は必ずしも伸びていない。出版点数および売り上げについては、頭打ちあるいは漸減傾向にあるようであるが、これはこのジャンルの人気というより出版全体の低落傾向によるものであると考えられる。 2. 一方、インターネットやDVDなど先進メディアによる普及はさらに進んでいるとみられる。北米でもネット上でのみ視聴可能なマンガやアニメの関連商品も販売されるなど、大手メディアや出版社による流通とは異なったルートでの拡大が見られることが、より明らかとなった。 3. 海外での受容・研究の成果:専門誌の発刊や相次ぐ研究書の発行など、日本研究の中でのポップカルチャー研究はさらに理論化・精緻化している。 本年度の調査の大きな成果としては、受容形態の変化が急速に進んでいることを確認できたことである。かつては各文化圏のフォーマットに合わせることで受容を促していたものが、日本のオリジナルにできるだけ近いものを歓迎する、という方向に変わりつつある。日本の現代文化の輸出にとって、大きな転換期を迎えつつあることが確認できた。
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