本年は、最終年度の4年目であるため、調査収集活動も進める一方で、10月に研究会を行い成果を公表、また年度末の3月に、報告書の刊行を行って、研究の総括をした。 具体的な活動は、次の通り。2012年10月27日に4年間の成果を公開する研究会を、常円寺日蓮仏教研究所(東京都新宿区)にて行った。当日の発表題目は、発表1渡辺麻里子「尊談の論目と引用書目について」、発表2藤平寛田「天台論義書の諸形態」、発表3大久保良峻「尊談における龍女成仏説について」。研究会には、談義書・談義所研究者が多く集まり、会場からの談義書に関する質問や翻刻作業に関するアドバイスなどを受け、貴重な知見を得ることができた。調査収集活動は、2012年10月28日に、天台宗天王寺(東京都台東区)の福田蔵の蔵書に関して、論義書資料を中心に調査閲覧を行った。この他、成果報告として、天台宗教学大会において学会発表を行った(2012年11月9日、叡山学院(滋賀県大津市)にて)。渡辺が「『鷲林拾葉抄』の引用書目について」、大久保が「『法華経』顕密論――最澄から安然へ――」、藤平が「叡山天海蔵『雑雑抄』と『恵光房雑雑』の一考察」を発表した。 年度末の2013年3月には、研究の集大成として、報告書『中世における天台論義書関係資料』を刊行した。全体は、I論考編とII資料編に分けて構成した。I論考編は、藤平「『宗円集』『宗満集』の研究」、都守「中山法華経寺所蔵『天台深極抄』(宗要集私日記)について」、大久保「龍女成仏説とその思想的意義――論義との関係を中心に――」、渡辺「伝忠尋撰『七百科條鈔』の研究」の四編を載せ、II資料編には、『宗円集』『宗満集』『宗円集算題』『天台深極抄』、『尊談』「龍女成仏」関係条、『七百科條鈔』を翻刻した。最後に「研究の概要」を加えて、全517頁の報告書としてまとめた。
|