研究課題/領域番号 |
21520179
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
柴 佳世乃 千葉大学, 文学部, 教授 (60235562)
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キーワード | 中世文学 / 読経 / 芸道 / 音楽 / 声明 / 法華経 / 書写山 / 口伝 |
研究概要 |
本申請研究は、日本中世における宗教と芸道および文学との関係について、<読経道>を中心として考究するものである。一次資料の収集と解読を通じて<読経音曲>の解明を目指し、文学・宗教・芸能における読経道の文化史的意義を明らかにすることを目的とする。 本年度は、読経音曲の解明に関して、次のような成果を得た。まず、論文として、「読経道と読経音曲一読経音曲の復元に向けて-」(『京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター研究報告書』近刊)を著した。読経道に関わる諸本の内容を読解する作業を重ねて読経音曲の特徴をまとめ、その要点のうち、読経音曲の詞章(すなわち、法華経のどこが音曲となるか)に主眼を置いて論じたものである。研究発表としては、巡礼記研究会(第8回研究集会、2011年10月23日、於神奈川県立金沢文庫)にて、「読経道の音曲について」と題して発表を行った。読経口伝書の音曲条を整理、解読し、同時代の仏教芸能である唱導の言説と対比して考察したものである。 また、読経道の根幹資料である『読経口伝明鏡集』の、学界未紹介の一本を調査研究し、「弥勒寺蔵『読経口伝明鏡集』『法華経声事』解題と翻刻-書写山伝来と円空書写をめぐって-」(千葉大学『人文研究』41号)として活字化した。さらに、読経道の文学的・文化的位相を明らかにするために、「『沙石集』の道命和泉式部説話一読経道伝承から読み解く-」(『無住-研究と資料』<共著>、あるむ刊)を著し、読経道の展開期たる鎌倉後期に成立した無住『沙石集』の記述について解読を試みた。 以上、読経音曲の具体相や、読経口伝書について調査研究した成果、ならびに隣接する諸文化における読経道との関連についての成果を公にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
読経道の復元的研究として、読経音曲の復元に向けての基礎作業を重ねている。その成果は、これまで発表・論文(共著を含む)のかたちで公にし、継続的に、達成すべき方向に向けて進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、読経道の復元に向けて、基礎作業を固め、ある程度纏める段階に入る。おそらく音声による読経音曲の復元を具体的に実現するのは難しいだろうが(専門家との十分な検討が必要なため)、実現可能なところまでこぎつけたい。少なくとも、本研究を通じて、その基礎作業を着実に推進する。それと併行して、声明・音楽の専門家と連携する態勢作りに取りかかる。
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