本年度は、『明月記』原本伝来状況の把握や、逸文の蒐集のため、まず阪急学園池田文庫所蔵の売立目録類を集中的に調査した。具体的には、週末を中心に延べ14日間出張し、同文庫所蔵の明治43年以降に刊行された売立目録の悉皆調査を進め、そこに収載されている『明月記』原本断簡や定家書状のほか、同じく定家の書写した古記録(『兵範記』など)・儀式次第、さらには『明月記』の紙背文書であった可能性のある同時代人の消息類などを電子コピーにより蒐集した。また同時に、日本古代・中世の典籍や懐紙、文書・記録などについても、関連するものとして蒐集に努めた。本年度中に調査を終えた売立目録は1457冊で、池田文庫所蔵分(全1871冊)の四分の三以上に当たる。残る部分については、次年度前半にひとまず調査を終える見込みである。 このほか、陽明文庫等に所蔵される『明月記』原本紙背から剥離された文書についても、その所在状況の把握と、図録類の電子コピーなどによる蒐集を進めた。 また、本研究を始めるに当たり、研究環境の整備にも努めた。具体的には、現存する売立目録の基本台帳である都守淳夫『売立目録の書誌と全国所在一覧』(勉誠出版)や、各断簡と本来一連のものであった『明月記』『朝儀諸次第』『古記録集』(以上冷泉家時雨亭叢書、朝日新聞社)などの『明月記』関係図書、調査先における断簡内容の理解や整理のための『新編国歌大観CD-ROM版』(角川書店)や電子辞書、携帯ハードディスク・USBメモリ等を購入した。
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