1.前年度から引き続き、明治32年日記の会読を続けた。明治32年5月以降からはじめたが、2014年3月にようやく同年9月なかばの記事に達したところである。これまで翻刻刊行してきた明治38~42年の東京時代の日記とは異なり、記述量が膨大であるため、なおしばらくこの年を読み続けることになろう。京都の国立美術館で展示替えがあるごとに出かけくわしい記録を残しており、その他の展覧会、あるいは旅先の寺社で見た絵画・仏像等についてもくわしく記述されているので、美術史研究者との連携・協力が必須であることを痛感している。 2.李花亭抄録の調査を行った。全13冊に及ぶ大部なもので、講義録のほか、書目からの抄記が多く、江戸期の学者の随筆を思わせるところがある。精査していけば、彼の教養の内実が明らかになってくると思われる。 3.石川近代文学館に所蔵されている藤岡作太郎関係資料の点検を行なった。簡単な目録も作成されているので、それらをもとに、何点か調査を試みたが、将来的に、館の担当者と連携し、しかるべき方法で公表したいと考えている。 4.『近代小説史』自筆稿本の撮影を行なった。今日流布しているのは、東圃遺稿第四巻(1917年 大倉書店刊)及び戦後岩波書店より著作集の一巻として刊行されたものである。この稿本がそれらとどのような関係にあるか、今後くわしく検討していきたいと思う。この講義のために作成したとおぼしき年表や書目一覧も存在しているので、それらについても今後の課題としておきたい。
|