平成23年度における本研究課題の成果は以下の通りである。 本年度は「奈良・平安初期の書簡表現の比較検討と史的展開の様相把握」を主たる目的として研究課題の解明をおこなった。 (1)敦煌書儀の書簡表現と奈良・平安初期の書簡表現との比較検討 これまでの基礎作業で進めてきた語彙集成と中国での書儀研究の情報や最新成果を踏まえて奈良・平安初期の書簡表現受容の様相把握を行う。敦煌書儀表現との類似のみならず相違にも着目する。表現受容には時間差が生じ、中国文献との間には数十年のズレが認められる。これが史的展開にいかなる影響を与えているのかに焦点化して、奈良・平安初期の書簡表現の特質と史的展開の様相の一端を明らかにした。 (2)書簡表現から見る「国風暗黒時代」の文学様相把握 書簡表現受容の観点から奈良・平安初期に亘る「国風暗黒時代」の文学状況の一端を、空海書簡の表現を手がかりに方向性を明らかにした。 以上の作業・調査から得られた知見は、以下のような形式で公開した。 [口頭発表]書儀・尺牘表現の受容-平安初期漢文書簡の表現を中心に- (第30回和漢比較文学会大会、筑波大学、9月25日) [論文]『伊勢物語』教材研究-「初冠」試解-(「信州国語教育」82号、pp.100-103) [報告]いま求められる「漢字力」とは何かを問う(「月刊国語教育研究」475号、pp.48)。
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