研究概要 |
戦後期の日本で広く普及していたサークル運動の実態を明らかにするため、各地で聞き取り調査を行いつつ、資料収集に努めた。花田の理論的研究として花田の生存中の協働者であった武井昭夫氏へのインタビューを共同で行い、花田清輝も「サークル運動」に強い興味を示し、雑誌において可能な限りその「動向」を見守り続けていたという証言を得ることによって、花田清輝の理論的研究がよりアクチュアルな問題として再検討されるべき課題であることがわかった。また、サークル運動において中心的なジャンルであり、しばしば共同的な形で制作された詩やルポルタージュなどの文学について、同時代の前衛的な文学・芸術運動や政治運動との関連の中で、新しい読みかえ・位置づけを行う作業の中で、次のような発表を行った。 研究代表者・鳥羽耕史は、これまでに共同で行ってきたサークルに関する研究会について、「合同研究会の経緯と成果」で報告し、聞き取りの成果を「証言と資料・文学雑誌『人民文学』の時代―元発行責任者・柴崎公三郎氏へのインタビュー―」や『戦後日本スタディーズ(1)』所収の無着成恭インタビューとして発表した。サークルと記録の問題については、「1950年代の「記録」―ダムと基地の問題を中心に―」や『戦後日本スタディーズ(1)』所収の「サークル詩・記録・アヴァンギャルド」、『文藝別冊開高健』所収の「紙と真実開高健の知的探求について」で考察し、芸術運動との関わりについては「Pavlov, Marx, and Surrealism」や『『綜合文化』解説・総目次・索引』、『石川淳と戦後日本』所収の「石川淳と演劇」において考察した。 研究分担者・菅本康之は、花田清輝の側からの理論的側面の考察として、「花田清輝の弁証法から<文化政治学>の読解へ」の報告を行った。また、研究成果発表のためのホームページの準備もはじめたところである。
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