研究課題
心敬の文芸活動のうち、関東下向以前の時期の活動を精査し、昨年度に引続き心敬の表現分析に必須と思われる作品の検討を行なった。今年度はまず、昨年より行なっている本能寺蔵『落葉百韻』の注釈作業をなし、その結果、『落葉百韻』内に見られた西行歌の本歌取によって、独自の思想から本歌の面影を自句に添わせんとする心敬の本歌取の特徴を把握するなど、句風の研究をさらにすすめることができた。また、本能寺のご好意により『落葉百韻』等の資料調査を行ないえた。それにより、法華宗寺院本能寺において、日与上人の主導の下、法華宗の僧や畠山氏に代表される地方有力武士たちが文芸活動をなしていたことを明らかにしえた。また、本能寺と並ぶ法華宗の両本山である本興寺でも史料を見せていただき、法華宗寺院と連歌との関連をさらに調査していくきっかけをつかみえた。続いて、心敬が宗匠をつとめ、専順、行助、宗祇ら有力連歌師が参加した『寛正六年正月十六日何人百韻』の注釈をなした。注釈により、この百韻内に、心敬の宗祇にあてた連歌指導書『所々返答第三状』で使われた付合が二つ含まれることが新発見としてわかり、『所々返答第三状』との比較によって、心敬の作風と宗祇の作風の相違が論証できた。その他、百韻内から心敬と宗祇の万葉集歌の取扱い方の相違点が浮き彫りとなり、徒然草百三十七段の影響を受けた心敬句が見いだせるなど訳注から得た知見は多く、論文(次年度冊子媒体掲載予定)となしえた。
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愛知県立大学大学院国際文化研究科論集(日本文化専攻編)
巻: 第十二号(日本文化専攻編第二号) ページ: 1-52
愛知県立大学説林
巻: 第59号 ページ: 1-31
愛知県立大学日本文化学部論集(国語国文学科編)
巻: 第二号(通五九号) ページ: 55-79
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