研究概要 |
本課題の研究代表者は、平成21年度には、研究協力者2名(川端咲子・清水(森谷)裕美子)とともに、大阪府立大学所蔵の椿亭文庫(日本近世演劇を中心とする土田衛氏旧蔵の文献資料)のうち、これまで目録が整備されていなかった番付(約2,200点)・絵づくし(約1,500点)の目録整備を行い、刊行した。目録の基礎部分は立命館大学アート・リサーチセンターによって公開されている椿亭文庫(一部資料のみ)のデジタル・アーカイブ目録であるが、その不備を補い、アート・リサーチセンター目録には収録されていない資料の目録をも併せて収録した。 また、研究協力者4名(川端・清水(森谷)・鈴木博子・松葉涼子)・本学大学院生1名とともに、椿亭文庫所蔵の台帳(歌舞伎脚本)『扇矢数四十七本』の演出を考える共同研究会を5回開催した。活字化した台帳を子細に講読し、必要に応じてパワーポイントによる視覚化した資料を用いて、従来明確でなかった演出上の疑問点を明らかにした。この研究のために、研究協力者が東京大学・早稲田大学・日本大学等が所蔵する番付・役者評判記等の関連資料を調査し、演出に関する情報収集を目的として歌舞伎学会等に参加した。研究代表者は、演出の考察の参考とするため、10回にわたって現在の歌舞伎の上演実態を調査した。 この成果を踏まえて、研究代表者は『扇矢数四十七本』の翻刻・解題を、研究協力者1名は上演資料である役者評判記の一部を活字化した。活字化した資料は、いずれも従来未紹介のものであり、今.後の近世演劇研究の進展に裨益すると考えられる。
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