本研究の目的は、浮世絵のデータベースを活用して歌舞伎研究をすすめることである。研究実施計画に従い、海外の美術館の調査および図録による該当する役者絵の検証を重ねた。春期休暇を利用した米国ホノルル美術館の調査では、浮世絵の閲覧のほか、データベース構築のための有意義なアドバイスを得ることもできた。 収集した画像資料をほかの同時代資料と確認した上で、データベースに格納できる情報に整理し、年代、演目、役者、役名等を格納した。昨年より続行してきた作業であり、また次年度以降にも続く作業ではあるが、一つの研究成果として、今回、ホームページ上に、初期浮世絵検索システムを公開した。内容は(1)「絵師別年代順役者絵」(2)「座元別年代順役者絵」(3)「外題別年代順役者絵」(4)「役者別年代順役者絵」(5)「役名別年代順役者絵」で、これによって歌舞伎の重要な項目である絵師、座元、外題、役者、役名を誰でも自由に検索することができる。つまり歌舞伎の画証である初期の役者絵を瞬時に見つけ出せるようになった。研究成果は研究者個人の論文として完結するだけでなく、広く共有し、他者によって更なる研究に繋がることも重要であろう。本研究成果はそこに意義がある。 今後は役者絵の絵柄を、固定した単なる画像ではなく、必要に応じて再抽出可能な画像におきかえられるようなシステムを導入し、歌舞伎をさらに画証的に研究していきたい。
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