平成21年度は首都圏のみならず、地方の文化事業(作家講演・文学碑建立・文学館建設・文学散歩のコース設定・土産物などの関連商品)などについての調査を行った。具体的には民間(スルガ銀行)の出資により設立した井上靖文学館(沼津)、市民運動によって設立した火野葦平資料館(北九州)、行政(県ならびに市)によって設立した石川県立文学館、徳田秋声文学館、泉鏡花文学館、室生犀星文学館(金沢)について建設計画から開館に至るまでの資料についての調査を行った。その際、地方新聞において文学的・文化的事項がどのように記述されていたのか関連記事を集積することによって、地方における文学館建設の異議についてある程度明らかにすることができた。また徳田秋声文学館・湯涌夢二館の研究員・学芸員を交えての研究会を行い、観光産業における文学事業の果たす役割について歴史的な経緯と現場の抱える問題点などについて理解を深めた。 地方で推進された産業振興策において観光資源として文学や文学者がどのように発見され、また貢献してきたのか、交通網の整備や人々の余暇の過ごし方の変質とどのように関わっているのか、また教育・アカデミズムの場においてどのように扱われてきたのか、今後継続して調査・考察を行いたい。
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