「文学館」と介して「文学」を同時代のイデオロギーに縛られない<情報化>という問題系から<文学場>を捉えかえすための調査を多岐にわたって行っている。そのように前提することによって、従来の文学史観、政治史観からも自由な第三の批評的立場を獲得し、当時の文学状況の全体像を漸近的に復元することができると考える。また高度経済成長という波の中で文学を「文学館」として結実させようとする、行政の目論見とともに文学主義というものについて戦前・戦後の言説から実証的に追うことによって既成の文学史に囚われない文学環境について再解読することが可能となっている。 文学が経済以外に政治・思想・文化など多ジャンルにわたる各種評論と同列的に扱われ、それを裏付けるような作家や評論家の創作の充実が達成されることによって<文化資源化>され、文学者は文化人となり文学は文学館へ収められるというようなキャノン化が行われていることが明からかとなりつつある。 また現在は文学館の設立の過程について地方行政との関係性に重点を絞り調査を行い、資料を整理している。文学ジャーナリズムの内閉的な参照・往還の運動というものを高度経済成長期の中で抽出し、ジャーナリズム環境の変化を知る格好のサンプルとしての文学の役割についても継続的に考察し分析したいと思っている。
|