文学館の基礎的な資料を調査するばかりではなく、地方において作家や文学作品といった「文化資本」がどのように発見され、運用されているのか実態調査を行った。 戦後日本では、全国総合開発計画で打ち出された「均衡ある国土の発展」という理念に象徴されるように、様々な政策分野において中央集権型の計画策定にもとづく経済発展に向けた産業政策が行われてきたが、開発を受容する地域の側には固有の歴史・風土・文化・民俗性があり、画一的な開発政策と地域固有の事情の狭間で、さまざまな問題課題が生じてきたといえる。その中で「文学」・「文学者」がどのような役割をはたしてきたのか。本研究では、高度成長期以降の産業政策や国土開発をめぐる状況の変化を前提としつつ、地域における「文学」・「文学者」が産業の振興にどのような役割を果たしたのか、また影響について、さまざまな専門領域から総合的に検討を行なった。 その一つの象徴として「文学館」を調査し、文化資産としての「作家」ならびに「作品」が再発見された社会的な背景(事情)について調査・分析をおこなった。「作家研究」といった研究方法をとる近代文学研究や地方大学の文学部ポストとの関係性もそこからあぶり出すことができた。 「文学」と「経済」との関係について明確化しようとすることが本研究の独創性であり、地方の財源と国家の文化行政への補助金額の推移などについても調査を行った。
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