『経国集』対策の注釈作業のための研究会を平成22年4月から平成23年3月の間に計14回開催した。一人一首の対策を担当し、底本翻刻・校異・本文整定・書き下し文作成・(典拠に基づく)語釈・現代語訳により構成した原稿を作成し、その原稿に対して、複数のコメンテーターと研究会参加者(連携研究者・研究協力者)全員が批評し、討議する。そのような研究会によって、今年度は計12首の対策の注釈原稿の検討を行ない、昨年度と合わせて、『経国集』対策全ての注釈原稿の素案が成った。なお、全体を見渡しての最終的な整備は23年度に行う。 継続的に研究会を開催し対策を読むことで、その形式美のおもしろさ(文学性)、漢籍の読みかえによる新たな表現・思想の創出(東アジア漢文世界における間テキスト性)、儒教・仏教・道教を横断する思想的幅広さなどの多様な問題が存在することが明らかになりつつある。 平成23年1月の研究会で注釈原稿の検討を終え、同2月から、上記の問題群に即して連携研究者・研究協力者各自がテーマを設定、研究して発表する活動に移行した。 並行して、各地の図書館等に所蔵されている『経国集』諸本の写真版を収集し、コピー、およびPDFファイル化したデータを連携研究者・研究協力者に配布した。主たる写本・版本49種の内、平成22年度は17種を収集し、昨年度と合わせて全ての写本の写真版収集が完了し、十全な校合が行えるようになった。 平成22年度は以上のような基礎作業の充実に努めたため、学会での口頭発表・論文発表等はなされなかった。平成24年度に、注釈とテーマ別研究の成果を書籍として公刊することを目指している。
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